4−1 エコポートモデル事業対象地区(エコパークゾーン)の概況
エコパークゾーンにおける海域の水質汚濁に関する環境基準に基づく類型はB類型で、平成6年度における博多湾の水質調査結果では、CODの年平均値は3.1mg/l〜3.4mg/lであり、環境基準(COD:3mg/l以下)を満足しておらず改善が求められている。
また、底質の調査結果では、COD値は23mg/g〜29mg/g、硫化物の値は0.26mg/g〜0.53mg/gなどとなっており、良好な状況とは言い難い状況であり改善が求められている。
エコパークゾーンは、港全体の中で最も大きな干潟である和白干潟(約80ha)や砂浜、岩礁など多様な自然海岸が多く残されており、まとまった塩沼地植物群落・照葉樹林などの緑や水生生物、鳥類など多様な生態系が存在し、貴重な生物が生息するなど、豊かな自然環境を持つ地域である。
特に野鳥は、毎年、約110種、約2万羽が飛来し、ズクロカモメなどの貴重な種もみられるなど、全国的にも有数の野鳥の飛来地となっている(Pic−2・3)。
また、都市における身近な自然として、和白干潟を中心に、潮干狩、探鳥、自然観察会などの野外レクリエーションや環境教育に利用されているほか、歴史を感じる場として、香椎宮の末社として海中に祭られている御島神社や、江戸時代に築造された石積護岸が存在している(Pic−4)。
一方、対象地区は自然環境に恵まれた地区ではあるが、近年の著しい都市化の進展にあって、海岸のすぐそばまで住居が存在し、海岸の防災やアクセスの整備などの生活環境にも配慮した整備が急務の課題となっている。
4−2 整備の基本方針
エコパークゾーンを含む博多港の東部地区は、第6次福岡市基本計画(1988牢(昭和63年)4月)では、博多湾東部海域を’海や水辺を活かしたスポーツ、レクリエーションや野鳥との触れあいが楽しめる親水性豊かなアメニティ空間の創出を図るなどウォーターフロントを積極的に活用したまちづくりを進めるゾーン(東部地区ウォーターフロントゾーン)、とし、博多港港湾計画(1989年(平成元年)7月)では、「親水性豊かな環境を活かし、自然環境を保全するとともに、おちつきと安らぎのある快適寮境を創造し、緑地や海岸線が調和した市民が水と親しむ場としての海域の利用を図る地域(東部レクリエーション海域)」として位置づけている。
アイランドシティは、1994年(平成6牢)7月に現地着工し、現在、鋭意埋立工事が進められている。
工事の実施にあたっては、環境保全のために種々の対策を講じるとともに、大気質、水質、騒音、海生生物、鳥類等について環境監視を行いながら慎重に進めている。
Pic−2 Wigeon,Black−headed Gull,Mew Gull in Wajiro Tidal Flats
Pic−3 Saunder’s Gull(Raer:IUCN)
Pic−4 Torii in the sea
一方、アイランドシティの整備により出現する静穏な海域や海岸線をエコパークゾーンとして保全していくこととしており、市民と学識経験者からなる懇談会(エコパークゾーンを考える懇談会)を設置し、1995年(平成7年)6月に整備の提案を受けた。
その内容としては、「自然と人の共生、エコロジカルな文明の創造を目指して」を基本理念として、「陸域と海域がとけ合う、豊かな自然の場」「生活環境の向上(安全性・快適性)と自然と学び、ふれ親しむ場」「都市の魅力の形成と交通環境づくりの場」の3つの整備の方向が提案されている(Fig−4)。
エコポートモデル事業では、この基本理念と3つの整備の方向性を踏まえ、自然、生物、ひと、みなと・まちの4つの視点から現況を整理し、保全するもの(保全す
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